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■100年に1度という弁明 100年に1度という世界的な金融経済危機の中で、各国の政策のあり方が大きく問われている。政府は何をすべきか、何をすべきでないのか。GDP世界第2位の日本のあり方も、当然に問われる。日本は金融部門のバランスシートが諸外国に比べて健全であるにもかかわらず、経済のパフォーマンスは先進諸国で最悪になりつつある。例えば2008年の成長率はアメリカがプラス1・3%であったのに対し、日本はおそらくマイナス成長になると予想される。最大の問題は、日本政府はマクロ経済運営に対する本来の役割を十分果たしていない一方で、官主導で民間への余計な介入に精を出していることである。金融機関以外の事業法人に対する公的資金の活用など、その典型である。 まず、政府関係者がしばしば口にする「100年に1度」という表現(グリーンスパン前米連邦準備制度理事会=FRB=議長の引用)はどの程度正しいのか。今年の主要国経済は、国際機関などの予測によればアメリカがマイナス2〜3%と見込まれている。確かに極めて深刻な状況だ。しかし大恐慌時1932年のアメリカの成長率は、実にマイナス13%だった。翌年の失業率は25%にも達した。金本位制の当時と比べると、われわれには、通貨量を調整する手段も財政政策の手段もある。傷はまだ浅い。もちろん、対応を誤れば重大事態になるという意味で100年に1度と言うのはそれなりに意味があるが、単純に大恐慌と比較するのは危険だ。後述するように、この言葉が「だから何でもあり」という形で安易な政策へのエクスキューズ(言い訳)に使われることが懸念される。ちなみに当のグリーンスパン氏は、「50年に1度か100年に1度」という言い方をしたのである。 ■消極的なマクロの金融政策 ただいずれにしても、世界的な規模での相当の需要低下が懸念される中で、財政金融政策をフルに活用した対応が必要になる。問題は主要国でもっとも経済の落ち込みの大きい日本が、財政金融両面でもっとも消極的なマクロ政策の国になっていることだ。国会は平成20年度第2次補正予算案の審議から21年度本予算案の審議へと向かっているが、これがすべて実現したとしてもマクロの財政刺激はGDP比2%程度と考えられている。アメリカはGDP比4〜5%の刺激策を行い、中国が同じく5%程度の刺激策を行う中で、日本の対応はいかにも小さく遅い。おそらく麻生内閣は、本予算成立後直ちに新年度の補正予算案を編成するつもりだろうが、これが成立するとしても数カ月先である。昨年10〜12月期の成長率を確認したうえで、目下審議されている21年度本予算案を直ちに修正するくらいの覚悟が必要なのではないか。 金融政策でも、昨年のマネーサプライ伸び率はアメリカ9%、ユーロ圏8%に対し、日本はわずか1・8%である。日銀はCP(短期金融市場で、信用度の高い大企業が資金調達を目的として発行する無担保の約束手形)の買い取りなど個別の流動性供給にはそれなりの対応をしているが、マクロの金融政策には極めて消極的だ。 日銀がこのような姿勢を崩さないから、一部で政府紙幣を発行せよという話も生まれてくる。経済の落ち込みがもっとも激しい国で、諸外国よりもはるかに低いマネーしか供給されていない点を放置することはできない。 このように、マクロ経済運営という政府の中心的課題について、現政権の取り組みは非常に弱い。景気対策を看板に掲げながら、その中身はあまりに空虚だ。そうしたなかでいま、非金融機関(事業会社)への公的資金活用という政府介入の動きが生まれてきた。 ■管理された破綻へ 報道によると、経済産業省は政策投資銀行を使って、打撃を受けた一般企業(非金融機関)に出資することを検討中という。同様にアメリカでは、自動車メーカー「ビッグ3」に対する連邦政府の融資が問題になっている。こうした点で、過去における日本の教訓は十分に生かされるべきだ。10年前の金融危機の時代、政策投資銀行を活用してダイエーなどに対する融資・出資が行われた。これは結果的に誤った救済であり、融資をいくら重ねても業況は改善せず失敗に終わった。結局ダイエーは、産業再生機構によって再生へと向かうことになった。 政策投資銀行の視点から見ても、同行を活用した安易な救済は大きな問題を残す。そもそも政策投資銀行は、いまや民間金融機関(ただし現状は100%政府出資)である。そして5〜7年後に政府所有株式を処分して完全民営化されることが法律で決まっている。そんな銀行に対して、政府が、傷んだ企業に出資させることを強要すれば、結果的に完全民営化などできなくなる。下手をすればこうした行為は、「民営化つぶし」になるのである。 基本は、存立できない企業は破綻(はたん)させること。ただし可能な限り清算型破綻ではなく再生型破綻にし、コアビジネスへの特化と雇用の維持を図ることである。これを秩序立てて行う、混乱を避けて進める役割を、かつての産業再生機構は果たした。日米ともこうしたいわば「管理された破綻」こそが必要であり、政府による安易な企業救済は必ず失敗するし、一方で著しいモラルハザードを招く。 またこれは、中長期的に一国の産業競争力を大きく低下させるだろう。産業再生機構の経験を日本自身が思い起こすとともに、積極的に世界に発信すべきだ。100年に1度という言葉をエクスキューズに何でもありの政府介入を実現させてはならない。 麻生太郎首相の「自分は郵政民営化に反対だった」という発言は、もはや政権にとって致命的な発言と言ってよい。今後どのような政策を掲げようとも、また行おうとも、また自分は反対だったということにならないか…。本来のマクロ経済運営が行われず、一方で官主導の安易な政府介入が行われようとする中、麻生政権は一層求心力を失った。産経
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