政治の季節迎えた中国
政治の季節迎えた中国


 中国が政治の季節を迎えている。建国60周年、天安門事件20周年の「政治に敏感な年」(中国筋)に世界不況が重なり、ポスト胡錦濤時代に向けた共産党政権内の権力闘争が激化しつつあるからだ。そのゆくえは現政権の「平和発展」外交、とりわけ関係修復が進み始めた日中関係を左右しかねないだけに、目が離せない。

 中国では春節(旧暦の正月)が新年の始まりだが、その大みそか前後に胡錦濤、江沢民の新旧指導者が極めて意味深長な政治的パフォーマンスを繰り広げた。

 胡錦濤国家主席はかつて毛沢東が武装革命のために立てこもった井崗山(せいこうざん)(江西省)を訪問、現地の老幹部や民衆と往時をしのび新年を祝った。毛沢東は1965年に井崗山を再訪問後、あの文化大革命を発動し、劉少奇(当時、国家主席)らあまたの政敵を粛清した。

 胡主席も党政治局常務委員就任後の93年に井崗山を訪問しているだけに、今回の再訪を機に何らかの政治行動に出るのでは、との観測が流れたわけだ。

 同じころ、江沢民前主席は自らの政治基盤である上海市の春節祝賀会に多数の市幹部を引き連れて登場、その模様を中央テレビ局を通じ3分半にわたり放送させるなどして健在ぶりを誇示した。

 新年を迎えての新旧指導者“競演”の意味は1週間後に判明した。2月1日の新華社電が「胡錦濤主席がこのほど(自らが提唱する)科学的発展観を国防・軍隊建設に貫徹させるため、党中央軍事委員会の『民主生活会』を招集した」と報じたからだ。

 「民主生活会」は中国共産党独特の内部会議で「批判と自己批判を通じ党員の誤りを正す」ことを建前としているが、毛沢東はよく政敵を粛清する場に利用した。

 井崗山を再訪した胡主席の真意は江沢民前主席に忠誠を誓う郭伯雄・軍事委副主席ら現在の制服組軍首脳の一掃による軍権掌握にあり、江氏の上海登場劇はそれへの強い牽制(けんせい)にあったと読める。中国では軍権の帰趨(きすう)が政権の存廃を決めるからだ。

 現に胡錦濤政権が発足して6年になるのに、胡主席率いる共産主義青年団(共産党の青年組織)人脈と江前主席を後ろ盾とする上海閥・太子党(高級幹部子弟)の権力闘争に決着がついていない。

 党中央政治局や書記局では両派の勢力がほぼ拮抗(きっこう)し、胡主席直系の李克強副首相らと江前主席が推した習近平国家副主席らが次期最高指導者の座をめぐって競い合っている。

 胡主席の軍権掌握が遅れているため、軍部は党・政府の平和発展外交を無視するような対外強硬路線を主張し、昨年6月に日中間で合意した東シナ海ガス田共同開発にも強く反対している。これは反日民族主義を鼓吹した江沢民前主席の意向にも沿う動きだ。

 今回の中央軍事委民主生活会の結果は明らかではないが、4日の新華社電は胡主席が批准した「軍隊幹部選抜規定」の発行を報じており、現政権にとって一定の前進はあったとみられる。胡主席が今秋の党中央委第4回総会までに軍首脳をどの程度一新できるかが、中国の今後を大きく左右する。

 江沢民系軍幹部が多数残留し、江氏意中の後継者、習近平国家副主席が軍事委副主席を兼務することになれば、対日強硬路線が復活しかねない。その目的のために強硬派が東シナ海で軍事的緊張をつくりだそうとすることも考えられる。中国軍の動向に細心の注意を払う必要がある。(産経 編集委員 山本勲)