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≪北の発射技術に格段進歩≫ 今回、北朝鮮が発射した「飛翔(ひしょう)体」が衛星打ち上げ用ロケットであったか、ミサイルであったかを判断するにはさらに技術的な分析を要するようである。しかし、衛星打ち上げ用ロケットだったとしても衛星打ち出しに必要な速度に達しておらず、通信衛星も軌道に乗っていない。実験は失敗だったと思わざるを得ない。他方、ミサイル発射実験だとしても、第2段目以降の切り離しに失敗した可能性もある。ただ、北のミサイル技術が進歩し、弾道ミサイルの射程が実験のたびに延長されてきたことは明らかであり、これは容易ならぬ脅威である。 発射の狙いとしては国威発揚といった国内政治的要因もあろう。そしてミサイルの射程延長を図ることで米国へのミサイル脅威を示威し、自らの外交手段とポジションを強化するという外交上の要因、さらに中東諸国へのミサイル兵器売却を促進するという側面も考えられる。しかし何よりも、北がミサイル開発計画の一環としてこの発射実験の成功に利益を見いだしていたことが大きい。 これらの理由から、試験通信衛星を運搬ロケットによって打ち上げる旨をあらかじめ、国際機関に通報し、国連安保理による追加制裁や日米両国のミサイル防衛による撃墜を未然に回避しようとしたのであろう。 ≪制裁での意思表示の他に≫ 日本に飛んでくる飛翔体でミサイル防衛による対応が可能なものは、今回のテポドン級より射程の短いノドン級程度のミサイルである。今回はミサイル防衛システムで対応できる範囲内に落下物がなかったので、これによる対応にはならなかった。政府の対応では発射前日に情報活動で少し混乱した面があったが、発射当日の対応ぶりは、従来の危機管理対応に比べて格段の改善が見られた。発射5分後には国内にほぼ通報されるという迅速さは見事である。 さて、問題は今後にある。われわれは今後、どのように振る舞うべきか。 第1は、国際社会における対応である。日本の立場は、発射したものが人工衛星であったとしても北の弾道ミサイル計画に関連するすべての活動の停止を求めた安保理決議に違反し、実質的な制裁を含む安保理決議を採択して国際社会としての意思を表示する必要があるというものである。 これに対し決議を無視する北朝鮮はもちろん、北を支持しようとする中国、ロシアの対応は北の違反行為と本質的に変わらない。国際社会の秩序と正義の名において許されるべきではない。われわれは世界の平和と安定をどの国がどのように損なっているかを訴え、米韓と連携を取りつつ、自由社会を代表して、かかる不正義と最後まで戦う必要がある。 第2は、運搬手段としてのミサイルへの対応能力を強化することである。北朝鮮のミサイル開発は今後も進み、いずれは小型化された核兵器が弾頭に搭載できることになろう。日本はすでに北が配備済みのノドンの射程内にある。日本は米国の核抑止に依存するだけでなくミサイル防衛によって米国の核抑止機能を補完しようとしてきた。しかし、現在のシステムで対応できるミサイルの射程・射高などには限界がある。 精密誘導など敵地攻撃能力を向上することも必要だが、それよりも、いかなる性能を有するミサイルにも対応できるよう、ミサイル防衛システムを改良・改善し、日本に向けたミサイル発射を抑止できるようにすることであろう。 ≪韓国との連携の重要性≫ 第3は、核兵器と弾道ミサイルについて徹底した開発凍結・削減・撤廃のための国際的な枠組みを構築すべきである。核については、すでにNPT(核不拡散条約)があり、実効性あらしめるため努力しているが核拡散は防止できておらず、現状は深刻だ。オバマ政権は核軍縮について新たなイニシアチブを取ろうとしている。ミサイルではMTCR(ミサイル技術管理レジーム)やPSI(拡散に対する安全保障構想)があるが、ミサイルの開発・生産・保有を制限するような枠組みはない。 これまでの成功例は、1987年のINF(中距離核戦力)条約だけである。北の核兵器を廃棄させるのみならず、ミサイルに搭載されるのを阻止することは日本だけでなく北東アジアの安定にとり重大な問題である。当面は、これらの問題を6カ国協議や米朝協議を通じて解決することが最も望ましいが、ミサイルの開発・保有を阻止するためのグローバルな枠組みづくりがそれにもまして重要な措置となる。 第4は、今回のミサイル発射でも判明したように北朝鮮によりもたらされる緊急事態に対処するためには、日米だけでなく韓国との緊密な連携が不可欠ということである。国家の危機管理上、日米韓の危機管理ネットワークを構築しておくことは平常時だけでなく、半島有事事態に対処するためにも不可欠な措置であり、日米韓の危機管理体制の整備を急ぐべきである。(産経【正論】拓殖大学大学院教授・森本敏)
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