【民主党解剖】第3部 ぶれる輪郭(1)募る小沢代表への不満
【民主党解剖】第3部 ぶれる輪郭(1)募る小沢代表への不満


 □「もう限界超えている」  西松建設による違法献金事件で民主党代表、小沢一郎の公設秘書が逮捕されて2カ月余り。小沢への不満のエネルギーは、党内に鬱屈(うっくつ)してたまったままだ。

 6日には、長野県軽井沢町の幹事長、鳩山由紀夫の別荘などで鳩山グループの研修会と懇親会が行われた。党国会議員や家族ら約60人が参加し、副代表の石井一(はじめ)や、参院議員会長の輿石東(こしいし・あずま)らの姿もみられた。  ■もくろみ外れる  もっとも、招待した小沢の姿はなく、鳩山は「こういう状況だから欠席されたのではないか」と気遣ってみせた。小沢も出席することで、一枚岩の結束を党内外に印象付け、小沢続投の機運を醸成しようという鳩山のもくろみは、当てが外れた。

 実は鳩山は2日、小沢と2人きりで会い、対話集会を開き、違法献金事件の説明を行い、党首討論に応じるよう求めていた。

 「分かった」。小沢は短くこう応じた。だが、7日には、小沢本人から事件の説明を聴くことも検討していた民主党の「有識者会議」(座長・飯尾潤政策研究大学院大教授)の会合開催は先延ばしとなった。

 7日夜には、小沢と距離を置く副代表、前原誠司を中心とする「凌雲(りょううん)会」が、都内のホテルで会合を開いた。「このまま行くか、行動を起こすかはわれわれ次第だ」。前原はこう息巻いた。党「次の内閣」(NC)文部科学担当の小宮山洋子も「『(辞任しろと)もう言わないのか』という抗議の電話がくる」と報告したという。

 前原は、名古屋市長選で民主党推薦候補、河村たかしが圧勝した翌4月27日にも、国会内の廊下で、「限界だ」と水を向ける小宮山にこんな見立てを披露している。「いや、もう限界は超えているでしょ」。

 名古屋市長選の勝利は、反転攻勢の機運のようにも見えたが、「小沢辞任」を求める世論の大合唱の前にかき消されていった。

 小沢は4月20日に北九州市で開かれた党所属参院議員のパーティーへの出席を皮切りに、全国行脚を再開している。翌21日、同市内のJR小倉駅前で、街頭演説に立っていた福岡10区の前衆院議員、城井崇(きい・たかし)は、小沢批判の厳しさを目の当たりにする。演説中、近づいてきた中年男性がこう吐き捨てたのだ。  「あんた、小沢に任せて当選できると思っているの? 絶対無理だよ」

 説明責任を十分に果たさないまま代表の座にとどまる小沢の姿勢が国民の民主党への期待感をしぼませ、最大目的である政権交代を遠のかせているようだ。  ■足元から突き上げ  小沢への不満の萌芽(ほうが)は、足元からも突き出てきている。4月15日夜、小沢を支持する議員グループ「一新会」が、東京・虎ノ門の中華料理店で夕食会を開いた。この席である新人候補が同会代表幹事、鈴木克昌(かつまさ)の手を握り締め、「何とか助けてください」と懇願した。出席者は、代表交代を願う気持ちを感じ取ったという。

 反小沢の幹部は4月、風に吹かれて桜が舞い散る東京・赤坂のホテル近くで、早くもこんな見通しをつぶやいていた。  「小沢はこの風で、桜は1年生議員や新人候補だ。選挙でみんな散るかもな」

                  ◇

 □「顔」頼み戦略 ほころび  ■“更迭”の歴史  民主党は、日本労働組合総連合会(連合)以外に有力な支援組織を持っていない。これまで、手間暇かかる組織育成を後回しにし、手っ取り早く世論の風の受け皿となる「党の顔」、つまり代表のイメージに頼ってきた経緯がある。

 実際、代表の人気に陰りが出ると、直ちに党内から引きずり降ろすという歴史を繰り返してきた。代表代行の菅直人は過去に、女性問題(平成11年)と年金問題(16年)で代表を追い落とされた。幹事長の鳩山由紀夫は役員人事に対する党内の反発(14年)、副代表の前原誠司も偽メール問題(18年)で代表辞任を余儀なくされた。

 それでも、今回はまだ本格的な「小沢降ろし」は始まっていない。背景には、政権交代を目前にして党内政局が先鋭化すれば、「やはり民主党はバラバラだ」と世論の失望を招くことへの危惧(きぐ)がある。小沢率いる自由党が15年、民主党に合流後、党の支持層が「中高年や保守層に広がった」(選対幹部)ことも、動きを鈍らせる要因となっている。

 「これまで民主党が繰り返してきたように、代表をすげ替えて事態が好転すると思っているのか」

 一向に収まらない辞任論にたまりかねた副代表、石井一(はじめ)は4月28日、「ポスト小沢」の筆頭格である副代表、岡田克也と参院議員会館で会い、強い口調で問いただした。  代表を支えるべきだという石井の「正論」に、岡田はとりあえず「それはよく分かっています。当面、小沢を支えます」と答えるほかはなかった。

 ■死活情報を独占

 小沢は3月31日の記者会見で、4月中に次期衆院選情勢を調べるため、党独自の世論調査を実施する考えを表明した。実施時期はその後2回にわたり延期され、結局は5月中旬以降になるとみられている。

 小沢はこのとき、調査結果と自身の進退問題を絡めないことも付け加えた。選対委員長の赤松広隆にも「選挙のための世論調査だ」とクギを刺しており、慎重に予防線を張っているのがうかがえる。

 党関係者によると、世論調査は年齢、性別、職業別の支持状況、候補の好悪、前回選挙の投票先など、1選挙区当たり約50ページに及ぶ資料になる。これに最終的に小沢本人、選対スタッフらの情報を総合的に判断して結論を出すといい、「19年の参院選は、ほぼ調査結果通りだった」というほど信頼性は高い。

 ただ、この世論調査は党費で実施されてきたにもかかわらず、その結果は、所属議員にも公表されていない。小沢とごく少数の選対スタッフで情報を囲い込み、鳩山にすら知らされないこともある。所属議員の死活を握る情報を独占することで、小沢は党内支配体制を固めてきたといえる。

 「世論調査をやるとすれば、いつやるのか。開示はどうするのか」

 4月7日に党本部で開かれた常任幹事会。政調会長代理の長妻昭の一言で、出席者の視線は正面に座る小沢に集中した。目を閉じたまま答えない小沢を横目に、鳩山がしどろもどろで説明していたという。出席者の一人は「『長妻、よく言った』という感じだった」と振り返るが、各議員が腫れ物に触るように小沢に接している現状もうかがえる。

 ■世論に右往左往

 民主党の支持率はこれまで、国政選挙の直前に上昇してきた。10年に民政党、新党友愛などと合併した後は、小泉旋風が吹き荒れた郵政選挙を除けば、計6回の選挙で、二大政党の一翼を担うまでに成長した。  特に、昨年9月に麻生太郎政権が発足してからは、首相自身の放言、失言を追い風に利用し、民主党は党勢を拡張してきた。

 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査では、小沢の秘書逮捕の直前の2月下旬の調査では、自民党支持率(21・9%)に比べ、民主党支持率(25・9%)は4ポイント上回っていた。だが、4月下旬の調査では、民主党支持率(21・5%)は低落し、自民党支持率(29・2%)に水をあけられた。

 党首の「顔」頼みの選挙戦略は、世論に見放されたときには完全に裏目に出る。これまで世論を味方にして麻生政権に攻勢を強めていた民主党が、今では世論に見放されかねないという危機感にもがいている。

 「世論の風向きに右往左往する『民主党病』が蔓延(まんえん)している。下積みを経験している議員が少ないので、もっともらしい理屈はうまいが、腹が据わっていない。常に目立っていないと不安になる」

 ある幹部は「党の泣きどころだ」としてこう嘆く。自民党に比べ支持組織が限定されているため、世論の風に頼らざるを得ないが、政権交代を目前にして、その「頼みの綱」がほころびを見せ始めた。立ちすくむ民主党の姿は、政党としての未熟さを際立たせている。(敬称略)

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 続投に意欲を示す小沢一郎代表に、自発的辞任を期待していた民主党議員らはいらだちを隠さなくなってきたが、表立った動きは鈍い。世論調査に表れた厳しい数字に浮足立つ民主党と、孤独の影を深める小沢氏はどこへ向かうのか。第3部では、世論の風に流されがちな党の基本軸を探る。産経新聞