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世界保健機関(WHO)による新型ウイルスの発生宣言で、各紙の焦点は感染者の世界的広がりに向けられた。そのため、4月29日の麻生太郎首相にとって初めての中国公式訪問は、きちんとした総括が行われないまま、埋もれてしまった感が強い。 もちろん各紙は社説でその成果を論評した。4月30日に産経は「主張」で「表面的互恵で済ませるな」と注文をつけ、「『最も重要な2国間関係』(温首相)とうたいながら、平気で難題を突きつけてくる相手である。知的財産権に加え、主権にかかわる領土問題など、国益を守る主張を緩めてはならない」とクギを刺した。戦略的互恵関係を進めていくことを確認したといっても、日本の国益に無防備のままでは外交の名に値しない。それは既成事実の容認であり、弱腰である。この点から5月1日の他4紙の社説を読むと、日本の利益に対する主張が乏しいことに気付く。 読売は「上滑りする戦略的互恵関係」で、「具体的な進展が図れたかどうか」と疑問を呈した。日経は「日中は危機を共有できたか」で、「懸案がまたしても先送りされたのは残念である」と書いた。両紙ともに、東シナ海のガス田開発問題や中国製冷凍ギョーザ中毒事件などの懸案が先送りされた点を指摘するのだが、困ったというにとどまる。朝日はIT摩擦に論点を絞った「中国市場力の輝きと脅威」で、「受け身に回るのでなく、先を読み、国際連携で先手を打つ外交がこれまで以上に必要になる」と、中国の強気な態度への対策を書いたにすぎない。毎日は「トップ交流は大切だが」で、「まず双方に根ざす不信感を取り除くことが必要だ」と書き、中国に対して核軍縮への協力を求めても、日本は米国の核の傘に依存しているではないか、日本の態度をしっかりさせることが先決だと、注文を付けた。 いったい、外交って何だろう。5月1日の日経は「オバマ大統領100日」を論評する記事「危機の指導者」で、「外交で真価が問われるのは、利害の対立が明らかになった時だ」と書いている。麻生首相の中国公式訪問は、利害の対立が明らかな問題を避けて、言葉だけが先行する互恵関係を確認したにすぎないのではないのか。 産経が「表面的な友好を演出する訪中に終わらせてはならない」と苦言を呈しただけで、他紙の社説が日本の国益が損なわれる危険に強い関心を示さないのは、さびしいかぎりだ。(東京本社発行最終版による)学習院大学名誉教授・藤竹暁・産経
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