TLE> 【危うい「友愛」外交】(2)「親米」笑顔 行動は逆さま
【危うい「友愛」外交】(2)「親米」笑顔 行動は逆さま


 「一部の米国人は誤解しているが、私は嫌米なんかじゃない。アイ・ライク・アメリカだ(米国が好き)」(米側会談メモ)。

 2月17日夜、在日米大使館の隣にあるホテルオークラ内の会議室。来日したクリントン国務長官と会談した小沢一郎民主党代表(当時)は、「親米」の笑顔を強調してみせた。「私は日米同盟が大事だと唱えてきた」と語り、「同盟には対等なパートナーシップが必要だ」とも訴えた。

 この夜、米側は「小沢がプッツンしないか」とヒヤヒヤだった。クリントン長官は直前の麻生太郎首相との晩餐会が遅れて小沢に30分近く待ちぼうけを食わせたからだ。長官と差し向かいのテーブルには茶菓もなく、ペットボトルの水がそっけなく置かれていた。  それでも小沢は、「長官も選挙経験がおありだ。選挙のことはよくご存じでしょう」と大物政治家として持ち上げ、長官も「ええ、もちろんわかりますよ」とにこやかに応じた。同席した鳩山由紀夫も終わり際に「私はスタンフォード大学で学びました。同窓のチェルシーさん(長官の一人娘)によろしく」と英語で自己紹介して愛嬌をふりまいた。わずか30分とはいえ、小沢らと国務長官の初顔合わせは笑顔で終始した。しかし、その裏には実現までに数週間の「暗闘」が隠されていた。

 ◆実現までに暗闘も

 会談は当初、米側が打診した。初の外遊先に日本を選び、「同盟重視」を打ち出したクリントン長官側は、「参院第一党の指導部とも会いたい」といってきたのだ。 しかし、事情通によると、小沢事務所の対応は「臨時代理大使名で要請書を書いて持参せよ」と、外交儀礼上、あり得ないような回答だったという。長官の滞在は3日間しかなく、米側はいったん調整を断念した。

 ところが、これを知った鳩山や山岡賢次国対委員長らがあわてて「会談を受けたい」と逆に要請した。米側は「それなら要請を書面にしてください」としっぺ返しをした上で、やっと会談が実現したのだった。  会談の雰囲気は確かに良好だった。にもかかわらず、「親米」「同盟重視」の言葉とはうらはらに米側には大きな疑問が残った。

 長官側が探りたかった米軍再編や思いやり予算、地位協定問題、アフガニスタン支援など日米の具体的懸案には、小沢をはじめとして誰ひとり答えようとしなかったからである。  小沢が代表を退き、鳩山代表になっても民主党への疑問は解けていない。むしろ国会での同党の投票行動を見る限りは、小沢の言う「同盟が大事」とは明らかに逆方向を向いている。インド洋給油支援延長に反対、米軍再編に反対、普天間は県外移設を求め、海兵隊のグアム移転経費分担や思いやり予算も反対−。日本政府がこれまで積み重ねてきた同盟協力について、そのほとんどを否定する行動ばかりなのだ。

 日米関係筋は「鳩山さんの友愛外交の中身がわからない」と首をかしげる。鳩山は2月、都内での講演で「日米同盟をよりよく機能させるために国連をうまく使う視点が大事だ」と語っている。

 ◆自衛隊縮小を寄稿

 しかし、国連安保理の北朝鮮制裁決議の例をみてもわかるように、日米連携があって初めて国連の機能が強化されるようになったのが現実だ。国連を使えば日米同盟が機能するという順序では決してない。鳩山の論理は逆立ちしているといっていい。

 「米軍の存在は第7艦隊で十分」と語って論議となった小沢発言についても、「第7艦隊の守備範囲は広く、年の半分は日本周辺にはいない状態だ。それでどうやって日本の安全を守れるのか」と不思議でならないという。「日本が米軍の代わりを務めるというなら歓迎だが、それにしては防衛力増強にも反対しているので、わけがわからない」(同筋)というのだ。小沢は10年前、文芸春秋に「自衛隊は歴史的使命を終えて、これから縮小することになる」との一文を寄稿している。

 7月にはオバマ政権と中国が、安全保障と経済の2本立てで仕切り直した戦略対話を本格的にスタートさせる。北朝鮮、イランの核問題も緊張を高めている。内外の安全保障環境がこれまでと大きく変わる中、日米は来年、日米安保条約体制発足50年を迎える。

 日本は米軍再編やミサイル防衛協力など同盟の維持管理をしっかりと進めながら、同時に高いレベルで日米の世界戦略を練り直していかなければならない時だ。

 そうした節目に、曖昧模糊とした「友愛外交」で米国や世界に対する日本の責務を果たしていけるのか。民主党に対して、米側にも「政権をとれば多少は現実的政策に変質するのではないか」というかすかな願望がなくはない。

 だが、ある日米関係筋は「願望は政策になり得ない。それだけは確かだ」とぴしゃりと言った。 (敬称略)

                   ◇  ■外交・安保政策への民主党の投票行動

 2009年 4月 海賊対処法案の衆院通過に反対。7人が欠席か棄権        4月 米海兵隊グアム移転の日米協定衆院承認に反対。参院否決  2008年12月 新テロ対策特別措置法案を否決(参院)。衆院再可決反対        4月 在日米軍駐留経費特別協定の衆院承認に反対。           小沢一郎ら12人欠席。参院否決