「永田町の液状化現象」
「永田町の液状化現象」


 去年秋の「大連立」騒動以来、「議連」という形で、自民党内の派閥を超えた新たなグ ループ化が盛んになっている。一方で、民主党も巻き込んだ超党派の議連結成も相次ぎ、 政界再編を見据えた動きとしても注目されている。その背景にはかつて自民党で最盛を 誇った派閥が弱体化し、派閥としての態をなさなくなった「液状化現象」が上げられる。

 自民党内の派閥横断の動きはまず、昨年秋結成された「真の保守政治考える会」の結成 だ。これは中川昭一元政調会長を会長に、党内の保守派が総結集したグループであり、 福田現リベラル政権に距離を置く。一方、その福田政権を支えるリベラル派としては、 与謝野馨前官房長官を座長とした財政改革研究会が結成され、園田博之政調会長代理や、 後藤田正純氏らが消費税増税や社会保障税などについて活発な提言を行っている。これ らリベラル派とは別の立場から福田政権にアドバイスしているのが中川秀直元幹事長や 竹中平蔵氏ら小泉政権の“残党”達で「経済上げ潮派」として財政再建派の与謝野グル ープとは肌合いを異にしている。このように自民党内は、保守派とリベラル派、そして 中間・現実派と三分される状態となってきた。

 そこに最近、ニョキニョキ出来てきたのが超党派議連だ。まず話題を呼んだのが「せん たく議連」。これは北川正恭元三重県知事らが立ち上げた「地域・生活者起点で日本  洗濯する国民連合」を支援する国会議員のグループということで自民党の河村健夫元文 相と民主党の野田佳彦元国対委員長が代表世話人となり、先の園田博之氏や石原伸晃氏 らが名を連ねている。また自民党の麻生太郎元幹事長と民主党の鳩山幹事長が立ち上げ た「地方政府IT推進議連」もその顔ぶれから注目されている。二人とも「ITオタク」  自称しているのが共通だが、それよりも鳩山氏の腹の内である。由紀夫氏の弟の鳩山邦 夫法相は、総裁選で麻生氏の代表推薦人になるほど肩入れしており、今も選挙区の関係 から親麻生と見られていることから、兄の由紀夫氏も麻生氏に将来の保険を掛けたので は、と穿った見方をする向きもある。

 一方、今月中旬に訪韓した自民党の加藤紘一元幹事長ら超党派訪韓団もその顔ぶれから 注目された。加藤氏の他、山崎拓元幹事長、そして民主党からは仙石由人氏や枝野幸男 氏など反小沢の議員が加わったからだ。この加藤訪韓団には先述の園田氏や後藤田氏、 それに社民の辻本清美氏なども参加しており、さしずめ超党派リベラルの総結集ともい えそうだ。

 こうした超党派議連の蠢動は、「ねじれ国会で政策を遂行するには超党派しかない」  (関係議員)という背景もあるようだが、大連立は再び日の目を見る可能性があるとし て、政界再編の先取りとしてとらえる向きもある。そしてもう一つは派閥の流動化だ。

 先日、山崎派に石原伸晃氏が新加入したが、これは今の自民党の派閥の現状を端的に表 すものだろう。山崎派は総裁候補が不在の上、代貸し格だった武部元幹事長が山崎氏と 仲違いし、おまけに大幹部の甘利経産大臣が麻生氏を応援するなど派閥内はガタガタだ った。山崎氏はどうやら石原氏に、跡目相続の言質を与えているようで、石原氏はいず れ総裁候補の一人にカウントされるだろう。この山崎派の醜態を、他の派閥も笑ってお られず、いずれも同じような液状化現象にあることに変わりはない。

 総裁候補を持っているのは、自民党9派閥のうち、18人の麻生派だけであり、谷垣派は4 月に古賀派と合体して61人の党内第3派閥になるが、古賀氏は谷垣氏の総裁候補に確約  を与えていない。第2派閥の津島派は、額賀財務相の派閥継承に反対する勢力も強く、  これも一枚岩とはいえない。そして最大派閥の町村派であるが、ポスト福田は町村氏と はとてもいえない状況だ。

 こうした派閥の液状化、政界再編の見通しなどから、国会議員は皆、疑心暗鬼にとらわ れ、居ても立ってもいられず、将来を見据えた保険を掛けようと必死なのだ。派閥横断 の政策グループや超党派議連の相次ぐ結成はこうした確かな海図が描けない議員たちの 不安心理があるのだろう。

西山弘道; ジャーナリスト。早稲田大学政経学部卒業後、文化放送で30数年、放送記者として 活躍。政治担当として、三角大福中、安竹宮の「永田町戦国史」を取材。 2005年10月、文化放送を退社、以後フリーのジャーナリストとなる。