中国 全人代・五輪控え拘束「数千人」 激しさ増す直訴者摘発
中国 全人代・五輪控え拘束「数千人」 激しさ増す直訴者摘発


 【北京=野口東秀=産経】中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が5日に北京で開幕するが、地方官僚や司法当局者の腐敗、土地の強制収用の実態を訴えるため北京に来た農民ら直訴者の摘発が、例年をはるかに上回る厳しさで行われていることが1日、わかった。北京五輪を控えている時期でもあり、北京中心部から車で1時間離れた区域に誕生した新しい「直訴村」でも部屋を貸す住民に対し、「直訴者に部屋を貸す者は家を壊す」と身元不明の男らが威嚇しているという。

 北京南部の大興区。ここに今年に入り、地方からの直訴者が本格的に住み着いた新しい直訴村がある。従来の北京南駅一帯の旧直訴村で摘発が相次いだため、直訴者が移動したのだ。

 旧直訴村は、当局の摘発などで、「1万人以上いた直訴者は激減、いまではせいぜい数千人程度になった」(関係者)といわれる。摘発により野宿する直訴者もめっきり減った。

 2月28日夜には当局が新直訴村を摘発、次々と直訴者を拘束した。全人代を前に自分たちの声を外国人記者にアピールするため集会を開こうとした約50人も当局に拘束された。

 旧直訴村もこの日だけで3度にわたる大規模な摘発を受け、新旧2つの直訴村と国家機関の陳情窓口などで拘束された者は「数千人」とも指摘される。旧直訴村近くの政府部門の陳情窓口周辺は、直訴者を拘束し、連れ帰ろうとする地方出身の私服当局者が群がっている。

 内モンゴル自治区から2003年に北京に上京した女性(45)は、長女(20)とともに摘発を逃れ、旧直訴村から新直訴村に移動してきた。

 女性は、石炭生産の会社を経営し、裕福だったが、「地元政府当局者らが結託し経営権を奪われ、財産を無くした」(同)という。

 月額家賃150元(約2200円)の6畳ほどの部屋。コンクリートむき出しの床。他の2人とひとつのベッドで並んで寝る。今も、毎晩午後9時から午前0時まで当局の摘発を逃れるために外出する「逃亡者のような生活」(女性)だ。

 民主活動家に対する監視も厳しくなった。昨年から相次いで著名な人権・民主活動家が逮捕されるなどしており、強制立ち退き問題にかかわっていた女性の元弁護士、倪玉蘭(げいぎょくらん)氏の自宅も5人の当局者らが2月下旬から24時間体制で取り巻いている。

 一方、1989年の天安門事件で息子を亡くした中国人民大学元助教授、丁子霖(ていしりん)氏らは2月下旬、全人代に対し、事件の遺族や被害者との直接対話や公開謝罪などを求める公開書簡を送付した。