【どこへ行くロシア】(上)全体主義的な国家資本主義に邁進
【どこへ行くロシア】(上)全体主義的な国家資本主義に邁進


 ■KGB人脈統制を強化

 【モスクワ=内藤泰朗】ロシア大統領選でメドベージェフ氏が圧勝、首相に就任予定のプーチン氏とともにロシアを率いる「2頭体制」へと踏み出す。プーチン氏が後継指名したメドベージェフ氏の当選は、プーチン路線を信任したことになる。ロシアは今後も「強国の再興」へ向け、エネルギー資源を武器に、全体主義的な国家資本主義体制への道を邁進(まいしん)していくだろう。

 ■プーチン主義

 「プーチン、プーチン…」。ロシアの権力の中枢、クレムリンを望む赤の広場は3日未明、異様な熱気に包まれた。降りしきる小雪の中、ロックコンサートに集まった若者たちは、目の前に姿を見せたプーチン氏とメドベージェフ氏に、歓迎のシュプレヒコールを贈った。彼らにはメドベージェフ氏の勝利は、「プーチン主義」の勝利と同義だった。

 プーチン氏が掲げるのは、ロシアを敵視する欧米諸国が恐れる「強いロシアの復活」であり、経済的に豊かなロシアだ。ロシアの最重要輸出品である石油の価格はこの10年間で10倍近くまで跳ね上がった。そのオイルマネーを武器に、変革を成し遂げようという壮大なる目標である。

 今回の選挙は、新大統領の選出というより、このプーチン主義を追認する国民投票だった。プーチン氏は「選挙は終わった。これからは、国民が共通の目標達成のために一致団結するときだ」とげきを飛ばした。

 ■外敵の存在

 「2頭体制」は、早くも小さな“混乱”を在モスクワの外交団にもたらしている。「プーチン・メドベージェフ体制の実質的な外交の指揮者は誰で、誰にアプローチすればいいのか」などと、困惑の色は隠せない。

 ただ、ロシアの国益最優先の外交姿勢に変化はない。ロシアの民主主義の後退や人権違反などを批判する欧米諸国には、戦略爆撃機の偵察飛行を再開し、英国際文化交流センターを閉鎖するなど「ミニ冷戦」を彷彿(ほうふつ)させる強硬姿勢も変わらない。「ロシア崩壊をもくろむ外敵」の存在は、数々の不満を抱える国民の目をそらし、団結を呼びかける政権にも好都合だからだ。

 急速に発展するお隣の中国に対しては、その力の伸長を警戒する向きも強い。「そのバランスをとるために、ロシア外交の中で日本の存在感が高まる」との見方も専門家の間にはあるが、「それはあくまで日本がもつ技術であり、経済関係の進展であり、北方領土問題の解決までにはつながらない」とみられている。

 ■ハイブリッド

 プーチン氏は2000年の大統領就任以来、出身母体の旧ソ連国家保安委員会(KGB)人脈や同じサンクトペテルブルク出身の旧友ら腹心を要職につけ、言論を弾圧し反対派を封殺。最重要産業のエネルギー企業を再国営化して国家の統制を強化してきた。

 昨年末には、ハイテクやナノテクなどの新産業育成から、14年のソチ冬季五輪開催準備を行う巨大な国策会社を続々と誕生させ、その社長や幹部に政府閣僚や旧友、KGB時代の同僚を任命することで、プーチン氏への忠誠を誓わせている。

 KGBが支配し、金もうけが最大の目的となったこの「国策モンスター会社」は、全体主義のソ連時代の強硬姿勢と、帝政時代の国家資本主義を骨格とした“ハイブリッド統治体制”の申し子のようにもみえるのだ。  「プーチン王朝」は、国民の支持を受けて「2頭体制」で、新たな地平に向け突き進んでいく。