チベット騒乱 国際的非難高まるが… 国連無力、厚い中露の壁 
チベット騒乱 国際的非難高まるが… 国連無力、厚い中露の壁 


 【ニューヨーク=長戸雅子=産経】チベット騒乱をめぐり、中国の人権弾圧に対する国際的非難が高まっているなか、国連の沈黙ぶりが目立っている。国連人権理事会(本部・ジュネーブ)ではチベットの人権問題を取り上げようとした米欧に対し、「内政干渉だ」と反発した中国にキューバなどの独裁国家が加勢、議題として取り上げられることもなく、同理事会は会期を終えた。安全保障理事会でも常任理事国の中国とロシアが人権問題を扱うことを頭から拒否。これまで人権弾圧を非難する本格的な決議や声明は出されておらず「人権のとりで」としての存在意義が問われている。

 「安保理が扱う問題でないことは明らかだ」

 3月の安保理議長国を務めたロシアのチュルキン国連大使は同月17日、チベット問題を安保理が討議する可能性を言下に否定した。

 「国際の平和と安全に対する脅威」を議題とする安保理だが、最近は「組織的で大規模な人権侵害は(地域の安全への)脅威の予兆」という発想から人権問題を取り上げる動きが米欧を中心に活発になり、昨年9月のミャンマー軍政による反政府デモ隊の武力鎮圧では議長声明採択にまでこぎつけた。

 しかし、自国内の人権問題が取り上げられることを恐れた中国やロシアが必死の巻き返しに出た。両国は常任理事国として拒否権を持っており、決議案や声明案を葬り去ることができる立場にあるのが強みだ。

 「人権侵害国家同士が手を組み、自国に不利な決議案が採択されるのを阻止する」と悪名高かった人権委員会を改組、2006年から活動を始めた人権理事会も無力さを証明した。中国やロシア、キューバ、パキスタンなどがメンバーになり、チベット問題でも討議の可能性を封印した。

 頼みの綱は「紛争の仲介・調停」を主要な任務とする事務総長だが、潘基文事務総長はこれまで中国の王光亜国連大使に「懸念」を伝え、北京五輪開会式への出席見送りを決めたものの、中立性を生かした独自の活動に乗り出す気配は見せていない。中国があくまで「内政問題」と主張し国際社会の介入を拒否していることに加え、06年の事務総長選挙で中国が潘氏を積極的に支援しており、さらに、再任に対して拒否権を行使できる立場にあることも影響しているとみられる。

                   ◇

 中国のチベット騒乱鎮圧に絡んで引き続き、各地でさまざまな動きが出ている。

 ■ボイコット

 米国では、与党共和党の大統領候補指名が確定しているマケイン上院議員が10日、ブッシュ米大統領の北京五輪開会式への出席について、「大統領は五輪出席の是非をよく考えるべきだ」と述べるなど、現状ではボイコットが適切だとの考えを表明した。

 野党民主党の候補指名を争うクリントン、オバマ両上院議員はすでに大統領にボイコットを求める考えを明らかにしており、与野党3候補の足並みがそろうかたちとなった。

 ■リレー辞退

 一方、ケニアの女性環境保護活動家で2004年ノーベル平和賞受賞者、ワンガリ・マータイさんは地元テレビ局のインタビューで、13日にタンザニア東部のダルエスサラームで予定されている北京五輪の聖火リレーへの参加を辞退すると答えた。ロイター通信が伝えた。

 中国は相変わらず強気の姿勢を見せている。国連人権高等弁務官事務所(本部・ジュネーブ)のアルブール高等弁務官の報道官によれば、中国はアルブール氏のチベット自治区訪問を拒否したという。

 ■6000人  こうしたなかで北京五輪の聖火は南米アルゼンチンに到着。現地時間11日午後(日本時間12日未明)首都ブエノスアイレスで行われる聖火リレーに備え、当局は警備要員として約6000人を動員した。(ワシントン、ロンドン、パリ、ロサンゼルス)