首相に民主党利用の勧め
首相に民主党利用の勧め


 ≪道路財源の山場再び≫

 揮発油(ガソリン)税などの道路特定財源問題が再び山場を迎える。29日以降に暫定税率維持を含む歳入関連法案の衆院再議決が可能になり、来月中旬には特定財源を裏付ける道路整備特別措置法案の再議決が控えているからだ。

 3月末の暫定税率期限切れでガソリンが値下がりして1カ月、今度は元の価格へ値上げとなるため、混乱はさらに広がるとみられる。場合によっては政局が重大な局面を迎えるかもしれない。

 それだけに、与野党の攻防は熾烈(しれつ)を極め、設置された協議会の場でも歩みよりは見られていない。そこで双方の主張を整理しつつ、打開のカギを探ってみたい。

 まず、福田康夫首相の提案がベースとなった政府・与党合意をおさらいしよう。今年度予算は政府案通りとし、来年度から民主党のいうように全額一般財源化する。それに際しては暫定税率も財政状況や環境対応を考慮しながら、今秋の税制抜本改革の中で議論するとしている。

 成立した今年度予算の円滑な執行、そして道路財源改革の理念に照らして妥当な内容である。

 民主党の方は政府・与党がいう来年度からの全額一般財源化を信用せず、暫定税率の即時廃止を主張して譲らない。これもなるほどと思う。特措法案が10年間の道路整備中期計画と道路財源をリンクさせているため、一般財源化があやふやだからだ。

 こうしてみると、焦点はこの特措法案にある。首相や与党がいくら期間を5年に短縮すると提案したところで、特定財源としての本質は変わらない。これには一般財源化を求める与党内の若手勢力からも強い反発が出ている。

 ≪強大な“内なる敵”≫

 つまり、道路財源と道路整備計画のリンクをどう断ち切るかがカギだが、それを首相も与党も明確にできない。このジレンマの原因が“内なる敵”にあることは、だれの目にも明らかである。

 道路財源は田中角栄元首相を源流とする道路族の牙城で、歴代政権は指一本触れられなかった。小泉純一郎政権が初めて切り込んだときにはすでに政権末期で、改革の具体策は安倍晋三政権に先送りせざるを得なかった。

 その安倍政権は一般財源化を「道路歳出を上回る税収」とし、歳出規模は道路整備中期計画に委ねる姑息(こそく)ともいえる方策をとった。そして福田政権下でできた計画は使途のほとんどを道路に特定し、ご丁寧に期間を従来の5年から10年に延長したのである。

 道路財源改革がいかに改悪の道をたどってきたかがわかる。それもこれも道路財源を選挙の武器とする道路族の圧力によるもので、政権もこれを利用してきた。“内なる敵”は実に強大なのだ。

 福田首相自身、就任当初は一般財源化にかなり後ろ向きだった。ねじれ国会下で民主党の反対がなければ、一般財源化は有名無実化したまま国会を通過し、首相の方針転換もなかっただろう。

 それでも総理・総裁として画期的な全額一般財源化を決断した意味は重い。決断した以上、政治生命をかけて実現せねばならない。だが、小泉元首相のような国民的支持を欠く福田首相が道路族を押さえ込むのは至難の業だ。

 ≪「今年度限り」担保せよ≫

 そこで、である。外圧、つまり民主党の圧力を与党向けに最大限利用したらどうか。特措法案は「引っ込めるか、今年度限りに大修正するかだ」とする小沢一郎代表の主張に乗るのである。

 引っ込めるのは予算執行がさらに混乱するから非現実的だが、他の方法でも「今年度限り」の担保は可能だ。与党執行部には国会決議で対応する案もあるらしいが、法案修正が筋である。少なくとも閣議決定はせねばなるまい。

 でなければ全額一般財源化を「来年度から」とした首相の言葉を、国民も信じることはできない。仮に党内若手勢力が特措法案反対に回るようなことになれば、再議決そのものが危うくなり政権自体がもつまい。

 すでに道路は全国隅々まで整備され道路特定財源はその役割を終えた。だが、極度に悪化した財政の中で、2・6兆円の暫定税率分を失うわけにはいかない。税率は他の先進国の半分だから、暫定を本則に切り替えた方がいい。

 一般財源のまま一部を導入不可避とみられる環境税に組み替えることも可能だ。これは民主党の主張でもある。今秋の税制抜本改革を待たずに方向だけでも打ち出せれば、日本は北海道洞爺湖サミットで十分にアピールできる。

 ここまで首相が踏み込んだら民主党も文句はいえまい。それでも人気取りのガソリン値下げにこだわるつもりなら、責任政党の看板を下ろしてからにしてほしい。  (産経新聞 論説副委員長・岩崎慶市)