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■募る危機感 打開策見えず 福岡、大分両県をまたぐ英彦山(ひこさん)(標高1199メートル)は日本3大修験場(しゅげんじょう)の一つとして知られる。多くの参拝者を集める中腹の英彦山神宮奉幣殿(ほうへいでん)(福岡県添田町(そえだまち))まで805段の石段が伸びる。参道の周囲には民家が点在するが、高千穂秀敏宮司は「高齢者が多く地域の行事もままならない。『限界集落(※(1))』みたいなものだ」と話す。 添田町はかつて、炭鉱の地として栄えた昭和35年ごろをピークに人口減少が進み、現在は最盛期の半数の1万1970人(3月末時点)と小さな町だ。人口の約3分の1を65歳以上の高齢者が占め、限界集落の町に近づきつつある。 「平成の大合併」では添田町にも周辺自治体との合併話が持ち上がった。平成15年9月には、周辺7市町村との合併協議会が設立された。だが、合併後の職員の採用数や財政力に応じた組織のあり方などをめぐって話し合いはこじれにこじれた。結局、合併しない方が住民の意向を行政に反映させやすいと判断し、単独での生き残りを選んだ。 ◆◇◆ 添田町は英彦山を中心とした観光業による地域振興を進めている。それだけに神宮参拝者の減少は、町の死活問題に直結する。 しかし、平成16年度、同町の観光客数は100万人を割り込んだ。これに歯止めをかけようと計画したのが、駐車場から奉幣殿を結ぶ全長約870メートルのスロープカー建設計画だ。階段の昇降がつらい中高年向けに考えついた切り札だった。 総額は計約9億4000万円。一般会計予算が例年約60億円程度の添田町が捻出(ねんしゅつ)できる額ではない。このため、過疎債(※(2))などで財源を確保し、平成17年10月に運行を開始した。 「いちばん参拝客が多い紅葉が見ごろの10、11月でも1日1000人にも満たなかった。だが、スロープカーができてからは2000〜3000人ぐらいが参拝するようになった」(高千穂宮司)。神宮の参拝者数だけではなく、町全体の観光客数も17年度に111万人、18年度には140万人と増加させた。 合併を回避した添田町の決断は観光客の増加で成功したかにみえた。だが、都市部への住民流出といった人口の自然減に悩む。 町の中心部にあるJR添田駅周辺は、英彦山神宮のにぎわいに比べ人影もまばらだ。町内で建築業を経営する武貞誉裕さん(31)は3人の幼い子持ちだが、「子どもらが成長しても町に仕事があるかどうかは分からない」と語り、いずれ3人が町外へ出ていくことを覚悟している、という。 ◆◇◆ 添田町の財政事情は厳しい。20年度は一般会計予算69億円のうち自主財源は13億円。31億円を地方交付税に頼っている。 人口流出に加え、町の衰退に輪をかけているのが、豪華なハコモノだ。温泉健康増進施設、体育館、戦国時代の城の形をした保健センター…。添田町は合併を拒否したが、合併第1号となった兵庫県篠山市と同じ轍を踏んでいるのだから何とも皮肉だ。台所は火の車なのに、なぜこうした豪華な施設ができるのか。 「すべて町長の力なんですよ」。添田町をよく知る地元関係者はこうささやいた。山本文男町長(82)は現在10期目。 山本氏は自民党の田中六助元幹事長の後援会長を務め、かつて“参院のドン”といわれた村上正邦元自民党参院議員会長とも関係が深いといわれる。長年、全国町村会の会長を務め、「“中央との太いパイプ”で国の補助金を引き出し、町に豪華な施設を建ててきた」(関係者)といわれる。 「ハコモノの維持管理費を今後どうやって払っていくのか」「合併した方が住民のためになる」。住民の一部は、単独での生き残りを目指す町の将来に危機感を募らせる。 しかし、山本氏はこう反論する。 「合併による国からの税源移譲や事務事業の移管は小さな自治体つぶしにつながるんですよ!」 添田町は国から税源が移譲されても課税対象が少ないため税収が増えず、逆に地方交付税を削減された分だけ歳入が減るからだ。 山本氏は「国は『合併しろ』と言っているだけ。合併でわれわれにどういう利点があるのかを明示してほしい。添田町が合併を真剣に考えるとすれば、篠山市などの合併効果の検証ができてからだ」と語る。 合併協議会の解散から4年あまり。当時の資料は町役場の倉庫で眠っている。 最近、山本氏が持つ“中央との太いパイプ”に頼らず、農産品を主力とした町おこしの動きが出始めているが、まだ緒についたばかり。町の生き残りを確かなものとする具体的な道標は示せないままでいる。 ◇ ※(1)限界集落 高齢者が多く世帯数が減少の一途をたどり、冠婚葬祭など社会的共同生活が維持できなくなる状況を示す概念。65歳以上の高齢者が住民の半数以上を占める集落は、国土交通省の平成18年度の調査で四国、中国地方を中心に7878カ所。人口減などで10年以内に消滅する可能性がある集落は2643カ所に達している。 ※(2)過疎債 平成12年に制定された過疎地域自立促進特別措置法に基づき、過去35年の人口減少率が30%以上などの要件を満たす過疎市町村に指定された自治体が起債できる公債。起債額の7割は地方交付税、残りを起債した自治体が返済する。高齢者施設や地域文化振興施設など、おもに「ハコモノ」に使われた。産経新聞
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