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■公共事業か財政規律か 中央政界では民主党が福田康夫首相への問責決議案提出をちらつかせ、与野党の攻防が激化しているが、昨年6月と今年3月の2度、議会で問責決議を可決されてしまった市長がいる。北海道の玄関口、新千歳空港と札幌市の中間に位置する恵庭市の中島興世(こうせい)市長(61)だ。札幌のベッドタウンで勃発(ぼっぱつ)した問責騒動は今もなお進行中だ。 ◆◇◆ 混乱のきっかけは、中心部にあるJR千歳線恵庭駅西口周辺での再整備事業計画(※(1))だ。今年度予算に、用地取得経費や調査設計委託費など約2億9500万円を計上するはずだった。しかし、予算案発表を控えた2月上旬、中島市長が事業の凍結を発表し、市議会はもめにもめた。 国と地方の税財政を見直す三位一体改革に伴う地方交付税の削減が、恵庭市の台所を直撃した。市財政の生命線である地方交付税は平成15年末で59億7600万円だったのが、19年末には45億2600万円に削減された。 中島氏は、「市が計画する公園開発か、子供を大切にする市政か」をスローガンに平成17年11月の恵庭市長選で1万8146票を集め、自民党推薦の現職候補を破り初当選した。保守地盤の強い同市だったが、有権者が“変革”を求めたのだ。 中島氏は事業凍結の理由についてこう語る。 「右肩上がりの成長を続けるなら計画を続けても構わない。だが、高齢化社会を迎え、20〜30年の長い期間で考えた施策を展開しなくてはいけない。ツケの先送りは許されない」 市の財政難には、議会も昨秋から危機感を抱いていた。市議会側の不満は、計画を凍結するならなぜ、この時点で決断しなかったのか、というものだった。 市は昨年10月、今後5年間の財政収支計画の修正版を作成した。三位一体改革による地方交付税削減などの影響で、20年度からの4年間で27億6000万円の収支不足に陥るとの試算結果を盛り込んだ。恵庭市の一般会計予算(※(2))は213億円。 「昨年の秋から財政難が分かっていながら2月に決断するのは遅すぎる」「議論が不十分だ」。中島市長の「ドタキャン」に、市議会では各会派から批判が噴出した。 市議会最大会派で自民党系の宮忠志会長は、「この事業はずっと前から地元と一緒に取り組んできた。きちんと説明して十分議論した上で決断すべきだ。その判断の仕方が問題だ」という。市議会は3月21、市長への問責決議を4会派20人の賛成多数(定数24)で可決した。 賛成した市議は「20人が賛成した意味は重い」と市長に猛省を迫る。だが、問責決議は地方自治法に定められる不信任決議とは違って法的拘束力はなく、中島氏は市長の座を譲らない。 ◆◇◆ 市長就任から2年あまり。まだ4年の任期の半ばを過ぎたばかりだが、市長と市議会の溝の深さは増すばかりだ。こうした対立の底流について、「恵庭は自民党系による市政が続いたが、中島市長がそれを破った。市長選からの恨みつらみが混乱の発端だ」(同市関係者)との解説もある。 再整備事業に期待を寄せている恵庭駅前通商店会の行澤勇会長(60)は、「恵庭駅は1日約1万人の乗降客がいる。恵庭の“顔”にふさわしい町をつくる必要がある」と再整備事業の必要性を訴える。一方で「財政状況が厳しい中で無理に再整備事業をする必要はない」(地元の主婦)と中島氏の決断を支持する声も少なくない。 問責決議の可決後、変化も見え始める。決議案に賛成した市議の一人は、「議会も反対ばかりではなく住民の目線に立たねばならない」とし、中島市長も「健全な市長と市議会の関係をつくりたい」と語る。 町の活性化を公共事業に頼ろうという、旧態依然の発想から抜け出せないでいる地方議会議員。有権者の支持を背景に、緊縮財政でゼロからの再出発を目指す市長。町づくりをめぐって市長と議会の対立が先鋭化する形で三位一体改革のゆがみが表面化したが、こうした痛みにあえぐ地方の悲鳴は、今も全国各地から聞こえてくる。 (この企画は酒井充、峯匡孝、小島優が担当しました 産経) ◇ ※(1)恵庭駅西口周辺再整備事業 恵庭市の顔となっている同駅の西口周辺について土地区画整理事業と市街地再開発事業を同時に施行し、再整備する計画。駅環状道路や歩行ネットワークを整備するとともに、商業、住宅施設などを誘致する予定だった。 ※(2)一般会計予算 予算の中心をなす。市税や地方交付税を主な財源に保健や福祉、都市基盤整備、ごみ処理、教育、消防など市政運営の根幹となる経費の予算。一方、特別会計は下水道事業や介護保険など特定の事業の予算となっている。
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