【台湾次期総統 馬英九は語る】(中)現状維持し平和と繁栄目指す
【台湾次期総統 馬英九は語る】(中)現状維持し平和と繁栄目指す


 台湾の馬英九次期総統が5日に行った産経新聞との会見で、中国による武力行使の可能性や、中台関係に関して述べた主な発言内容は次の通り。

 【武力衝突】  大陸(中国)が軍事力を増大させているのは事実だ。急速であり、かつその過程は不透明で、多くの国に不安を抱かせる。だが大陸は軽々には武力を行使できないだろう。この数十年間の成長を一瞬にして壊したくないからだ。台湾海峡で武力衝突が起きれば、台湾も大陸も数十年は発展が遅れる。そんなことは誰も望んではいない。

 大陸の国力が増して豊かになり、国際的な地位が高くなるほど責任も増し、勝手な武力の行使などできなくなる。米国の対イラク政策への欧州や各界の反応を見れば分かるが、国家が強大になればなるほど簡単に軍事行動を起こせなくなるものだ。強大な武力があれば目的を完全に達成できるとは限らず、大陸との経済関係の改善は、両岸(中国と台湾)はもとより地域全体の安定と平和にとってプラスだと思う。

 【WHO加盟】

 (台湾が参加を求める)世界保健機関(WHO)の問題は、実は昨年までいい方向に進んでいた。ところが、(陳水扁総統の)政府が昨年、「台湾」名義でなければならないといいだし、正式会員になることを希望した。この結果、日本、米国、欧州連合(EU)は反対に回った。オブザーバー(参加)を了承していたが、状況が変わり、支持から反対に転じてしまったのだ。

 現在の国際情勢下で台湾が持つべきは柔軟性だ。米国、日本、EUの支持を得るのは容易ではなく、各国が寄せた信頼は大切にすべきだ。諸外国を驚かすようなやり方は、信用を失い、事態を難しくするだけだ。

 今年のWHO総会は(総統就任式前日の)5月19日に始まるため、もう間に合わないが、私は就任後、もっと柔軟な方法で参加実現を目指したい。

 【ミサイル問題】

 台湾は外交的な孤立という問題を抱え、苦境に立たされ続けてきた。しかし、(陳政権下の)この8年で孤立と苦境が増した。これは否定できない事実だ。大陸が台湾に向けるミサイルの数は、陳総統の2000年就任時は300基足らずだったが、いまや1000基を超えた。だが、私はミサイルを増やさせないだけでなく、減らし、撤去させる方向で努力する。

 それには、われわれもミサイル購入などに頼らず、対話を通じて大陸に対し、(軍事的緊張は)誰にとっても不利だと伝えていく。そして私は独立路線は取らず、統一も話し合うことはできないと訴える。現状を維持し、みなのためになる平和と繁栄を目指そうと。

 ならば、両岸双方が受け入れ可能な現状とはなにか。それは(国民党が)かつてから主張している、いわゆる(1992年に香港で交わされたとされる)「92年合意」だ。この時にわれわれが到達した認識は、(中台とも)「一つの中国」は受け入れるが、その定義にはそれぞれ異なる表現があるというものだった。

 台湾人も中国人もメンツを大切にする。だがこのメカニズムなら、みなのメンツを保てる。それぞれが解釈を見つけ出すのだから、(「一つの中国」をどう定義するかという問題は)ひとまず取り置き、その間に切迫した問題を話し合うことができる。事実、シンガポールで翌年の93年、両岸初の(民間トップによる)会談が実現し、話し合いを通じて(中台が公文書の認証など)共同利益を生みだすことができたではないか。(台北 長谷川周人)産経新聞